新しい自画像A
F100号 アクリル、ビーズ、ラインストーン、タイル、樹脂、キャンバス


新しい自画像B
F100号 アクリル、ラッカー、キャンバス


 現代における自画像とは、何か。

 スマートフォン等の通信端末の発達により、ソーシャルネットワーキングサービスやそれらを利用したゲ
ームなどのサービスは近年目覚しい発達を遂げている。それに伴い、注目を浴びているのが、プレイヤー
の分身となるキャラクター「アバター」である。顔の見えない状況で、自分らしさを第三者に示すために、プ
レイヤー自身が創造する彼らを、私は現代における自画像の姿として捉えた。

 今回、私はこのような「現代の自画像」に対して、F100号キャンバス2枚を使用しそれぞれに異なるアプロ
ーチを行い、新しい現代における自画像を作り出すことを試みた。

 まずは『新しい自画像A』である。まず、アバターにおける大きな魅力の1つに「カスタマイズ」がある。
利用者それぞれが自由気ままに、身に着けたい物を本人の身体に代わってアバターに着ける事ができる。
そこで私は、学生時代に対する懐古という意を込めて、当時の制服を着用させた。加えて、他にもアバター
特有の要素を付加させようと考えた結果、身体、衣服、背景に至るまで、ありとあらゆる部分へとデコレーシ
ョン、巷ではこれに親しみを込めて「デコる」と呼んでいるが、それを施した。ここでは作品にビーズ、ラインス
トーン、羽などのモチーフを多くあしらい、観衆の注目を集めることを目標とした。アバターが、他人と差異を
付けることで他者よりも目立ち、自分自身に気に留めてもらうための手段であると捉え、その効果を従来の
絵画作品にも加えてみた。

 次に全裸の自分自身を配置した『新しい自画像B』だ。アバターは、顔が見えない状態でのコミュニケー
ションにおいて使用する画像である。私はそのような状況では、人は自分自身をさらけ出すことは稀である
と考えた。そこで、アバター等でよく見られる作風で敢えて自らのプライベートな部分を見せた時、どのよ
うな感覚が生まれるかを試すことにした。アバターにもよく見受けられる作風、明度差を少ない色数で表す
る“ベタ塗り”の技法を取り入れ、加えて身体を構成するパーツ、例えば目や鼻などは複雑な部分を単純化
した図形を使用し、さらに頭身を実際よりも低く設定し、キャラクターらしい雰囲気を出すことを試みた。この
ような雰囲気の画像で、他人に見せることを躊躇するような一面、この作品で言えば陰毛、肛門などをさらけ
出した。従来の絵画作品では、自身の裸像を描くことは大して珍しい事では無いと感じる。しかしアバターの
ような画像において、このような自画像は比較的、稀ではないかと考えて制作した。

 いずれの作品も、組み合わせがミスマッチとなるであろう要素を足し算することで、出来る限り新しさを醸し
出すことを目指した。そこで見えてきたものは“違和感”である。この違和感を表層化することで、これまでに
無いような自画像における新しい面白さを作り出すことが出来たと考えている。

 

展示時の様子